踏み込んだなら、最後。




「あの、ぜひ……作ってきて欲しいです」



じっと見つめてくる。


時間の問題。
こんなのは、時間の問題でしかない。

半年後の未来を想像したとき、千石くんと手を繋いでいる自分がいた。



「…私と同じおかずになっちゃうけど、」


「はい」


「……あまり凝ったものは作れないけど、」


「汐華さん」



千石くんの筋の通った鷲鼻(わしばな)は、横顔になると最大限に魅力を放つ特徴だ。

アップバングされた短髪は爽やかで涼しげで、とてもよく似合っている。



「うれしいです。すげー、うれしい」



私はこの人を大切にしたい、というよりは。

大切にしなくてはいけない、と、思った。



『はーいみんなー、じゃあお弁当広げるよー』



お弁当で思い出すのは、小学4年生の遠足だ。


私は2組、シロちゃんは4組。

それぞれ仲のいい友達ができていたから、お互いそこまで気にかけてはいなかった。



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