踏み込んだなら、最後。




『あっ…』


『わっ!お、オレじゃないよ…!こいつが押すから…!』


『ちょっと由季葉ちゃんのお弁当…!謝んなよ高木!!せんせーっ、由季葉ちゃんのお弁当が高木のせいで落ちちゃいましたー!』



クラスメイトの男の子が背後からぶつかってきて、私が手にしていたお弁当が地面に落っこちた。

まだ蓋を開けたばかりで何も手を付けていなくて、楽しみに取っておいたフルーツまで。


ぜんぶ土がついてしまって、食べられなくなってしまったんだっけ。



『汐華さん、先生のおにぎり1コあげる。ねえみんなー!汐華さんにおかず少しだけ譲ってあげてくれないかな?』


『ううん、だいじょーぶ』


『えっ、漆原くん…?』


『僕といっしょに食べるから』



そのとき私のもとに来てくれたのは、やっぱりシロちゃん。

泣きはしなかったけれど落ち込んでいた私の腕を引いて、自分のビニールシートを敷いた場所まで連れていってくれた。



< 82 / 280 >

この作品をシェア

pagetop