踏み込んだなら、最後。
「千石くん、」
施設の門が見えてきた、そんな場所で。
先に足を止めたのは私だった。
「無理、してない…?」
「え?」
「毎日送ってくれるけど…、きっと千石くんのほうも用事とかあるだろうし…」
みっちーとかなりんが言っていたことが気にならないわけじゃない。
わけじゃないけれど、千石くんを疑ってしまうと、そんな自分が嫌いになる。
それだけはしちゃいけない、信じなくちゃいけない。
今だって不安そうに向けてくる目が、私にまたそう思わせてくる。
それを感じて私は安心したいだけだ。
「迷惑…、でしたか?」
「ちがうの、迷惑じゃないよ…、本当にそれだけはなくて……逆に迷惑じゃないかなって、」
「そんなことないです。俺は…汐華さんと話せるだけで嬉しいから」
「…私も、うれしい」
ぎゅっと、肩にかけた持ち手を握る。
そんな私に影が重なったと思えば、距離を詰めてきた千石くんがいた。