踏み込んだなら、最後。




「手、握っても…いいですか」


「う、うん…」



なんかもう、いいかなって。

いつだろういつだろうって待っている毎日を変えてみたくなった。


私が提案してしまえば、必ず千石くんはうなずいてくれちゃう。


むしろひまわり園の兄弟たちは私と彼が付き合っているものだと思っているらしく、とくに中学生組はからかってくる。



「抱きしめるのは…ダメ、ですか」



一応は通り道。

たまに車も通るし、今の時間だと部活終わりの中学生組と鉢合わせそうだ。


ドクドクと速まる心臓を押し殺しながらも首をぶんぶんと横に振ったときだった。



「本当に会っていかなくていいのか。いつも寂しそうにしてるぞ」


「…服とか、取りに来ただけだから」



すぐに身体を離した。

離したというよりは押し返して、バッと声がしたほうへ振り向く。


門の前、ボストンバッグひとつを手にした私服姿の彼がいる。


佳祐お兄ちゃんと一言二言交えて、それだけでまた背中を向けようとしている───シロちゃんが。



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