踏み込んだなら、最後。
「……じゃ」
「おいシロ、由季葉はずっとお前のこと心配してたんだぞ」
「…大丈夫だから。僕は楽しくやってる。
……きみも楽しそうで安心したよ」
そう言って、私の背後に立つ千石くんを数秒だけ見つめたシロちゃん。
その眉が寄ったのも一瞬。
きみ、なんて。
ここでくらい呼んでくれたっていいんじゃないの。
誰かに監視でもされているの?
私の名前を呼んだらシロちゃんが死んじゃうの?
また違った顔を持って、また違った匂いと雰囲気をまとわせて、また消えていく。
「なん…で…」
「…反抗期だよ、俺にもあった。ほら中に入れ由季葉。千石くんもいつもありがとう」
「…いえ」
遠ざかっていく後ろ姿が、ほらまた。
スッと首のうしろを触るんだ。
自分で気づいてないのなら教えてあげる。
それは、それはね、シロちゃんが嘘をつくときの癖だよ。