踏み込んだなら、最後。




『はじめまして、由季葉(ゆきは)ちゃん』



恥ずかしくなって、そばにいる大人の背中に隠れた。

ゆっくりと引き剥がされて、新しい大人に抱き上げられる。


去っていく背中たちが2度と私を迎えに来てくれないこと、なんとなく分かっていた。



『今日から“ひまわり園”のみんなは、由季葉ちゃんの家族だよ』


『かぞく…?』


『そう。みんなで遊んで、みんなで笑って、みんなでご飯を食べるの』



やだ、やだ。
ここはお家じゃない。

パパはここにいないもん。


どこに行っちゃったの?

こんなところ嫌だ、帰りたい。



『由季葉ちゃん…!だいじょうぶ、大丈夫よ』


『いやぁぁーーー…っ!うわぁぁぁん……っ』



このときが最初で最後だったらしい。

私がこんなにも取り乱すほどに泣いたこと。


4歳、だっけ。


私がこの児童養護施設─ひまわり園─に預けられたのは。



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