踏み込んだなら、最後。
『ユキちゃん、ぼくがずっと一緒にいるからね』
その夜、トタトタと小さな足音が耳元で聞こえたと思えば。
『いい子、いい子。だいじょーぶだからね、寝ましょうね』
とん、とん、とん。
私のお腹を優しく叩きながら、そっと顔を寄せてくる大好きな男の子がいた。
きっと保母さんたちの目を盗んでまで来てくれたんだ。
こんなふうにそばにいてくれたんだね、6歳のシロちゃんは───…。
「いつから?昨日?…病院は?」
「これで下がらなかったら連れてくしかないけど…、やっと薬も効いて朝よりは熱も下がってる」
「いや熱いよ。保母さんたちなんで
居ないんだよ」
「ちょうど保育園のレクなんだ」
夢から覚めると、誰かの手が私のおでこに重なっていた。
ふわっとかすめた香りは別のものがやっぱり混じっていて、これは違うものだ別人のものだと、私はまた夢のなかに閉じこもる。