踏み込んだなら、最後。
「まさかマジで来てくれるとは思わなかった」
「…高熱で死にそうってメッセージ送ってきたの、佳祐兄ちゃんだろ」
「そしたらすぐ飛んできてびっくりだわ。
…変わんねーな、おまえ」
シロ───、と。
よかった、また見れた。
私のためにシロちゃんが飛んで来てくれている幸せな夢を。
「絃姉が来たってほんと?」
「来たよ、夜また来るって。会っていけよ」
「…やめとく。それまでには帰るし」
しばらくすると片方は部屋を出ていって、もう片方はベッド脇にストンっと腰を落とした音がした。
だいぶ朝よりは薬が効いている感覚がするけれど、まだ視界がぼやける。
ううん。
ぼやけている理由は風邪なんかじゃない。
「しろ…ちゃ……」
「…無理しすぎた?ばかな男のことなんか、もう忘れたらどう」
「……わすれ、ない……、ずっと……おぼえてる」
忘れるわけない。
忘れられると思うほうが馬鹿だ。
いつも、常に、ずっとずっと心配してたんだよ。