レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
ノツィーリアはかつて一度だけ『魔導師を迫害しないで欲しい』と父王に進言したことがあった。母が語ってくれた思い出話の中の魔導師は決して悪い人ではなかったからだ。
適正に保護し、その力を遺憾なく発揮できるように環境を整えてあげれば国民の生活もより豊かになっただろうに、ノツィーリアの主張は父王はおろか大臣たちの興味も引けなかった。
説得のかなわなかった自身を情けなく思うとともに、夜逃げ同然に国外逃亡する羽目になった魔導師たちに胸の内だけで詫びる以外になにもできなかったのだった。
父王がこうして疎んでいた者すら利用してまで金稼ぎをしようとするあたり、いかに王家の財政が逼迫しているかをうかがわせる。
ノツィーリアが奥歯を噛みしめて涙と呼吸の乱れをこらえていると、魔導師がガラス板を指先で軽く突いて描かれていた絵を消した。
続けて望遠鏡を回してノツィーリアの方にレンズを向ける。
再び鏡のような板の中心が叩かれた瞬間、沈鬱な表情で立ちつくすノツィーリアの全身が映しだされた。まばたきを繰りかえせば板の中の自分も同時に細かく睫毛を上下させる。
「国王陛下、こちらをご覧ください~」
楽しげな声で呼びかけた魔導師が、親指と人差し指をガラス板の表面に添える。
二本の指でなにかを掻き集める風に指先が数回閉じられると、板の中の絵は玉座の間全体を映しだした。
続けて今度は隙間を押しひらく風な手付きで指の間の距離を広げていく。すると望遠鏡が徐々に近づいてくるかのようにノツィーリアの上半身だけが映しだされ、しまいには顔だけがガラス板の中いっぱいに映しだされた。自分の顔が驚きを示していることに気付いたノツィーリアはとっさに望遠鏡から顔を背けた。視界の端で、板の中の自身も銀髪に顔を隠す。
「このように、顔も体も隅々まで鑑賞できちゃうんですよ~」
適正に保護し、その力を遺憾なく発揮できるように環境を整えてあげれば国民の生活もより豊かになっただろうに、ノツィーリアの主張は父王はおろか大臣たちの興味も引けなかった。
説得のかなわなかった自身を情けなく思うとともに、夜逃げ同然に国外逃亡する羽目になった魔導師たちに胸の内だけで詫びる以外になにもできなかったのだった。
父王がこうして疎んでいた者すら利用してまで金稼ぎをしようとするあたり、いかに王家の財政が逼迫しているかをうかがわせる。
ノツィーリアが奥歯を噛みしめて涙と呼吸の乱れをこらえていると、魔導師がガラス板を指先で軽く突いて描かれていた絵を消した。
続けて望遠鏡を回してノツィーリアの方にレンズを向ける。
再び鏡のような板の中心が叩かれた瞬間、沈鬱な表情で立ちつくすノツィーリアの全身が映しだされた。まばたきを繰りかえせば板の中の自分も同時に細かく睫毛を上下させる。
「国王陛下、こちらをご覧ください~」
楽しげな声で呼びかけた魔導師が、親指と人差し指をガラス板の表面に添える。
二本の指でなにかを掻き集める風に指先が数回閉じられると、板の中の絵は玉座の間全体を映しだした。
続けて今度は隙間を押しひらく風な手付きで指の間の距離を広げていく。すると望遠鏡が徐々に近づいてくるかのようにノツィーリアの上半身だけが映しだされ、しまいには顔だけがガラス板の中いっぱいに映しだされた。自分の顔が驚きを示していることに気付いたノツィーリアはとっさに望遠鏡から顔を背けた。視界の端で、板の中の自身も銀髪に顔を隠す。
「このように、顔も体も隅々まで鑑賞できちゃうんですよ~」