レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
自分を抱きしめるようにして見られたくない部分を隠すと、鏡を覗きこむメイドたちが一斉に意地の悪い笑みを浮かべた。
「まあ! 姉姫様、よーくお似合いですわあ」
「これならお客様もお悦びになること間違いなしですわねえ!」
メイドたちが、にやにやと歯を見せて笑いながら心にもないことを口々に言う。
ノツィーリアは四方から浴びせかけられる称賛を無表情でやりすごすと、宝石で飾られたサンダルを促されるままに履いた。
続けて円卓に移動させられて茶を出される。
「お務め前に、こちらをお飲みください」
身づくろい後のくつろぐための茶ではないことを念押しされて、おそるおそるティーカップを手に取る。
それは今までに嗅いだことのない甘やかな香りがした。味自体はおいしく、メイドの鋭い目付きに見張られる中、ゆっくりと飲みすすめていく。
「……ごちそうさま」
そっとカップを皿の上に置き、茶に細工をされていなかったことに安堵してほっと息を吐きだす。
メイドたちが静々と茶器を片付け始めたその直後。
ノツィーリアの身に異変が起こった。心臓が一度、強く脈打つ。
(これは……!)
全身が燃えるように熱くなった。この体の反応は、父王に読まされた本で確かに目にした記憶があった。媚薬を飲まされたのだった。これからさせられることを思えば当然だろう。
動揺を悟られぬように奥歯を噛みしめていると、メイドのひとりがもったいぶった口調で言い放った。
「こちらのお茶、娼館から取り寄せたそうです。よく効くんですって」
メイドたちが一斉に笑い出す。
耳障りな嘲笑が熱を帯びた体を小突き回し、心を切りつける。
ノツィーリアは膝の上できつく拳を握りしめると、胸の痛みと全身を襲う熱をぐっとこらえたのだった。
◇◇◇◇
約束の時間が迫り、メイドに前後を固められた状態で客室への移動を始める。
これからなにが起こるかわからないという不安が心に無数の棘を突き刺してくる。
「まあ! 姉姫様、よーくお似合いですわあ」
「これならお客様もお悦びになること間違いなしですわねえ!」
メイドたちが、にやにやと歯を見せて笑いながら心にもないことを口々に言う。
ノツィーリアは四方から浴びせかけられる称賛を無表情でやりすごすと、宝石で飾られたサンダルを促されるままに履いた。
続けて円卓に移動させられて茶を出される。
「お務め前に、こちらをお飲みください」
身づくろい後のくつろぐための茶ではないことを念押しされて、おそるおそるティーカップを手に取る。
それは今までに嗅いだことのない甘やかな香りがした。味自体はおいしく、メイドの鋭い目付きに見張られる中、ゆっくりと飲みすすめていく。
「……ごちそうさま」
そっとカップを皿の上に置き、茶に細工をされていなかったことに安堵してほっと息を吐きだす。
メイドたちが静々と茶器を片付け始めたその直後。
ノツィーリアの身に異変が起こった。心臓が一度、強く脈打つ。
(これは……!)
全身が燃えるように熱くなった。この体の反応は、父王に読まされた本で確かに目にした記憶があった。媚薬を飲まされたのだった。これからさせられることを思えば当然だろう。
動揺を悟られぬように奥歯を噛みしめていると、メイドのひとりがもったいぶった口調で言い放った。
「こちらのお茶、娼館から取り寄せたそうです。よく効くんですって」
メイドたちが一斉に笑い出す。
耳障りな嘲笑が熱を帯びた体を小突き回し、心を切りつける。
ノツィーリアは膝の上できつく拳を握りしめると、胸の痛みと全身を襲う熱をぐっとこらえたのだった。
◇◇◇◇
約束の時間が迫り、メイドに前後を固められた状態で客室への移動を始める。
これからなにが起こるかわからないという不安が心に無数の棘を突き刺してくる。