レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
 得意げに繰りだされる説明に、大臣たちが『さすが陛下』と言わんばかりの尊敬のまなざしを向けて、自分たちの主君の偉大さを誇るかのように胸を張る。
 そんな臣下たちの態度を眺めわたした父王が、満足げな笑みを浮かべて言葉を継ぐ。

「当初は客先に出向かせる予定だったがそのまま誘拐されるおそれを考慮し王城に客を招くことにしたのだから、わが厚情に感謝するのだな。初回の客はひと月後だ。準備は抜かるなよ」
「……。……かしこまりました」

 絶望感に締めあげられた喉からやっとの思いで返事を絞りだす。
 ノツィーリアは父王に深々と頭を下げると足早に玉座の間をあとにした。

   ◇◇◇◇

 玉座の間の巨大な扉を抜けた瞬間、それまでこらえていた涙が浮かんできた。口を押さえて嗚咽を飲みこむ。

(見ず知らずの人に毎晩犯されなければならないなんて、そんなの耐えられない……!)

 控えの間を駆けぬけて廊下に飛びだせば、城勤めの文官たちが眉をひそめて一斉にさげすみの視線を突き刺してくる。
 男たちがノツィーリアを見て小声で話しはじめた。
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