レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
「やれやれ、人使いが荒いこって」
「すまぬな、シアールード。何度も転移魔法を使わせて」
「へいへい。あいつの準備を待つ間、ちょっくら休んで来ますわ。じゃあね~」
魔導師は皇帝とノツィーリアに向かって雑に手を振ると、その場で忽然と姿を消した。
寝室に静寂が訪れる。
ノツィーリアは、立て続けに見せられた魔法というもののすごさに驚嘆させられっぱなしだった。つい率直な感想を洩らしてしまう。
「あの方は、凄まじい力をお持ちなのですね」
「ああ。力があまりに強大すぎるゆえ、魔導師の間でも奴を生かしておくべきか殺してしまうべきかと意見がわかれて争いを起こしておったのでな。余が横からかっさらってやったのだ」
「そうだったのですね……」
あれほどまでに強力な魔導師を連れ去ることができたと事もなげにいう、皇帝もまたすごい人なのだなとノツィーリアはしみじみ思い、皇帝の顔をじっと見つめた。
健康的な浅黒い肌、艶やかな黒髪。睫毛は長く、目蓋を伏せれば目もくらむような色気を漂わせる。その姿は冷徹皇帝と呼ぶにはあまりに美しく、物語に出てくる麗しの騎士を具現化したかのようだった。
宝石のように煌めく赤い瞳が、ふと傍らに視線を投げる。
「そなたの父は魔導師という存在の有能さを見抜けず迫害までしておったな。此度の作戦ではそれが幸いした。もしもレメユニール王家でも魔導師を擁していたならば、国王に魔道具の利用を持ちかけられなかっただろうからな。……いや、シアールードは隠密魔法も得意だから、あるいはどうにかできた可能性もあるが……」
顎に手を当てて思案に耽る。
しかしすぐに腕を下ろすと、ノツィーリアを見て少しきまずげに口元を微笑ませた。
「すまぬな、シアールード。何度も転移魔法を使わせて」
「へいへい。あいつの準備を待つ間、ちょっくら休んで来ますわ。じゃあね~」
魔導師は皇帝とノツィーリアに向かって雑に手を振ると、その場で忽然と姿を消した。
寝室に静寂が訪れる。
ノツィーリアは、立て続けに見せられた魔法というもののすごさに驚嘆させられっぱなしだった。つい率直な感想を洩らしてしまう。
「あの方は、凄まじい力をお持ちなのですね」
「ああ。力があまりに強大すぎるゆえ、魔導師の間でも奴を生かしておくべきか殺してしまうべきかと意見がわかれて争いを起こしておったのでな。余が横からかっさらってやったのだ」
「そうだったのですね……」
あれほどまでに強力な魔導師を連れ去ることができたと事もなげにいう、皇帝もまたすごい人なのだなとノツィーリアはしみじみ思い、皇帝の顔をじっと見つめた。
健康的な浅黒い肌、艶やかな黒髪。睫毛は長く、目蓋を伏せれば目もくらむような色気を漂わせる。その姿は冷徹皇帝と呼ぶにはあまりに美しく、物語に出てくる麗しの騎士を具現化したかのようだった。
宝石のように煌めく赤い瞳が、ふと傍らに視線を投げる。
「そなたの父は魔導師という存在の有能さを見抜けず迫害までしておったな。此度の作戦ではそれが幸いした。もしもレメユニール王家でも魔導師を擁していたならば、国王に魔道具の利用を持ちかけられなかっただろうからな。……いや、シアールードは隠密魔法も得意だから、あるいはどうにかできた可能性もあるが……」
顎に手を当てて思案に耽る。
しかしすぐに腕を下ろすと、ノツィーリアを見て少しきまずげに口元を微笑ませた。