レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
「では、恐縮ではございますが、どうか、わたくしめを、お救いくださ……、っ」

 言いきる直前で唇をふさがれた。その熱さだけで、体が欲望の火柱に飲みこまれる。
 烈火に焼かれながらも辛うじて形を保つ理性にすがりつき、自分から皇帝を押し倒したくなるほどの衝動をこらえながら、情熱的な口づけを夢中で受けとめる。

「ああ、ノツィーリア姫……!」

 わずかに唇が離れるたびに、吐息混じりにあるいは熱を帯びた声でノツィーリアの名を呼んでは幾度も唇を重ねなおしてくる。 腰に回された腕に、強く抱きよせられる。

 なぜこんなにも狂おしげに触れてくれるのだろう。
 なぜこんなにも切なげな声で名を呼んでくれるのだろう。
 まるで媚薬の効果がうつってしまったかのような皇帝の一挙手一投足に、ノツィーリアは胸の高鳴りを覚えずにはいられなかった。


 優しさと情欲とを孕んだ口づけが、灼熱の夜の始まりを告げる。
 媚薬の熱とルジェレクス皇帝から与えられる熱情に酔わされてなにも考えられなくなったノツィーリアは、絶え間なく与えられる悦びに溺れつづけたのだった。
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