修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
3.それぞれの思惑
それから2週間が過ぎ、毎週3度クルトは離れに遊びにやってきた。また、時々クラーラもその後で合流をする。その都度、レギーナは2人と遊び、そして終わる頃にロルフが迎えに来て、2人を連れて行ってくれる。
時には、以前のように疲れて眠ってしまった2人を待って、ロルフと歓談をすることもあった。その頃にはレギーナも随分屋敷に慣れたものの、本館の方は相変わらず何もわからない状態。そんな彼女に、ロルフは少しだけ本館の話などをした。
ロルフは、あまりにレギーナが本館のことをよくわかっていないので少し不思議そうな顔だったが
「わたしはすぐ離れに配属でしたから、そんなに本館のことを知らなくても良いということだと思います」
とレギーナが言えば、なんとなく腑に落ちない顔ではあったが「そうかな……?」と返した。
そして、またある日、2人は手を泥だらけにして遊んでいたが、ロルフがそこに迎えにやって来た。手には1メートル程度の十字クワを持っており、庭園の何かの樹木の根っこでも切っていたのだろうとレギーナは思う。
だが、双子は気にせずレギーナのスカートを引っ張った。
「レギーナ、次は何をして遊ぶ?」
「ねえ、レギーナ、あの花は……」
「残念ですが、今日はここまでですよ! さあさあ2人とも。ロルフさんがお迎えにいらしてますよ。手を洗っていらっしゃい」
今日は泥団子を捏ねて遊んでいた2人。そうレギーナに言われて「はぁ~い」と庭園の奥にある小さなポンプに2人は走っていく。
「よっ、今日も楽しく遊んでくれてありがとう」
「いいえ。こちらこそ、退屈しのぎですけ……あっ!」
くん、と何かに引っ張られる。まとめて後ろに縛っていた髪の中に、木の枝が差し込まれてしまい、レギーナは「あっ、あっ」と困惑する。
「待て待て。とってやるよ」
「ごめんなさい……」
ロルフが手を伸ばす。思いのほか近づいて、レギーナの鼓動はどきどきと高鳴った。
(わっ、わっ、ロルフさん、近い……すごく、近いわ……!)
細身だと思っていた体も、自分と並ぶと間違いない男性のものなのだと思う。レギーナは身を縮めて彼が自分の髪から枝を抜いてくれることを待った。
「ちょっと、ごめん」
そう言って、ロルフは顔をレギーナの耳元に近づける。そうか、枝をよく見るために、近づかなければいけないのか……? いや、そこまでではないような? と、レギーナは少しだけ混乱をしたが「はい!」とだけ返事をした。やがて
「もう少しこうしていたいが」
ぽつりとそう言って、ロルフは手を離す。
「え? ……あっ、ありがとう、ございます!」
枝は彼女の髪からとれた。が、そのせいで結った髪が少し乱れてしまう。レギーナに「髪を結い直した方が良い」とロルフが言えば「はい!」と彼女はその場で髪を下ろした。
ふわりと広がる彼女の金髪は波打って、日差しをきらきらと弾くようだ。ロルフは目を細めてそれを見て
「あんたの髪は豊かで綺麗だな」
と言った。
「ええ? そんなこと初めて言われました! 広がって、まとめるのが大変なんです。癖っ毛だし……でも、ここにある石鹸を使って洗ったら、少し最近ボリュームが押さえられてる気がしますね……?」
そう言いながら髪を結うレギーナ。ロルフは「はは」と笑って
「うん。とても綺麗だ」
ともう一度言った。レギーナはなんだか恥ずかしくなって「ありがとうございます」と小さな声で返す。
その時ちょうど、クルトとクラーラが戻って来て、びしゃびしゃの手でレギーナに抱き着き、ロルフに2人は怒られた。
時には、以前のように疲れて眠ってしまった2人を待って、ロルフと歓談をすることもあった。その頃にはレギーナも随分屋敷に慣れたものの、本館の方は相変わらず何もわからない状態。そんな彼女に、ロルフは少しだけ本館の話などをした。
ロルフは、あまりにレギーナが本館のことをよくわかっていないので少し不思議そうな顔だったが
「わたしはすぐ離れに配属でしたから、そんなに本館のことを知らなくても良いということだと思います」
とレギーナが言えば、なんとなく腑に落ちない顔ではあったが「そうかな……?」と返した。
そして、またある日、2人は手を泥だらけにして遊んでいたが、ロルフがそこに迎えにやって来た。手には1メートル程度の十字クワを持っており、庭園の何かの樹木の根っこでも切っていたのだろうとレギーナは思う。
だが、双子は気にせずレギーナのスカートを引っ張った。
「レギーナ、次は何をして遊ぶ?」
「ねえ、レギーナ、あの花は……」
「残念ですが、今日はここまでですよ! さあさあ2人とも。ロルフさんがお迎えにいらしてますよ。手を洗っていらっしゃい」
今日は泥団子を捏ねて遊んでいた2人。そうレギーナに言われて「はぁ~い」と庭園の奥にある小さなポンプに2人は走っていく。
「よっ、今日も楽しく遊んでくれてありがとう」
「いいえ。こちらこそ、退屈しのぎですけ……あっ!」
くん、と何かに引っ張られる。まとめて後ろに縛っていた髪の中に、木の枝が差し込まれてしまい、レギーナは「あっ、あっ」と困惑する。
「待て待て。とってやるよ」
「ごめんなさい……」
ロルフが手を伸ばす。思いのほか近づいて、レギーナの鼓動はどきどきと高鳴った。
(わっ、わっ、ロルフさん、近い……すごく、近いわ……!)
細身だと思っていた体も、自分と並ぶと間違いない男性のものなのだと思う。レギーナは身を縮めて彼が自分の髪から枝を抜いてくれることを待った。
「ちょっと、ごめん」
そう言って、ロルフは顔をレギーナの耳元に近づける。そうか、枝をよく見るために、近づかなければいけないのか……? いや、そこまでではないような? と、レギーナは少しだけ混乱をしたが「はい!」とだけ返事をした。やがて
「もう少しこうしていたいが」
ぽつりとそう言って、ロルフは手を離す。
「え? ……あっ、ありがとう、ございます!」
枝は彼女の髪からとれた。が、そのせいで結った髪が少し乱れてしまう。レギーナに「髪を結い直した方が良い」とロルフが言えば「はい!」と彼女はその場で髪を下ろした。
ふわりと広がる彼女の金髪は波打って、日差しをきらきらと弾くようだ。ロルフは目を細めてそれを見て
「あんたの髪は豊かで綺麗だな」
と言った。
「ええ? そんなこと初めて言われました! 広がって、まとめるのが大変なんです。癖っ毛だし……でも、ここにある石鹸を使って洗ったら、少し最近ボリュームが押さえられてる気がしますね……?」
そう言いながら髪を結うレギーナ。ロルフは「はは」と笑って
「うん。とても綺麗だ」
ともう一度言った。レギーナはなんだか恥ずかしくなって「ありがとうございます」と小さな声で返す。
その時ちょうど、クルトとクラーラが戻って来て、びしゃびしゃの手でレギーナに抱き着き、ロルフに2人は怒られた。