修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
ロルフとクルトは再び歩きだす。クルトは「あーあ」とつまらなそうに声をあげた。
「早く後継者選びが終わるといいのになぁ」
「もうすぐ終わる」
「僕、なりたくないよ」
「それでも、クルトがならなくちゃいけない」
「嫌だよ」
クルトはその場で立ち止まる。もう目の前には一つの離れがあり、そこには護衛騎士が立っていた。ロルフに護衛騎士が頭を下げて近寄ろうとしたが、それへ、ロルフは手のひらを向けて止める。
「クルト」
「僕、後継者になんてなりたくないよ」
少し俯いて、唇を尖らせるクルト。
「だが、お前がならなければ、カルゼがなる。あいつは金に意地が汚いし、領民のことを考えるようなやつではない」
「だったら、おにいちゃんがなってくれたらいいのに」
「俺はそういう教育をうけていないからな。俺が候補に入っているのは、本当に頭数を揃えたかっただけだ。沢山産ませたものの、女系のようだったからなぁ……男がなかなか生まれないのも、なんというか悲劇だな」
ロルフはその場でしゃがみこんで、クルトを見上げた。クルトは唇を噛み締めて、目に涙を浮かべている。
「やだ。僕、おにいちゃんと庭を綺麗にするお仕事して、それからレギーナと遊んで、それで、楽しく暮らしたいだけなんだ」
「クルト」
「新しいお母さまは、死んだお父さまの財産狙いだったから、お父さまが死んで本当は喜んでいるんでしょ……それで、カルゼを味方につけて、カルゼを次期後継者にしたらもっとお金を使えると思ってるんだ。わかってるよ。でも、それでも僕は嫌なんだ……」
じわりとクルトの瞳の端に溜まった涙が頬を流れた。だが、クルトはそれをぐいぐいとぬぐった。
「ごめん。大丈夫! それじゃ、またね、おにいちゃん!」
そう言って、クルトは護衛騎士が待っている方へと走り出した。ロルフは彼の背を見送ってから、もう一つの離れに向かったのだった。
「早く後継者選びが終わるといいのになぁ」
「もうすぐ終わる」
「僕、なりたくないよ」
「それでも、クルトがならなくちゃいけない」
「嫌だよ」
クルトはその場で立ち止まる。もう目の前には一つの離れがあり、そこには護衛騎士が立っていた。ロルフに護衛騎士が頭を下げて近寄ろうとしたが、それへ、ロルフは手のひらを向けて止める。
「クルト」
「僕、後継者になんてなりたくないよ」
少し俯いて、唇を尖らせるクルト。
「だが、お前がならなければ、カルゼがなる。あいつは金に意地が汚いし、領民のことを考えるようなやつではない」
「だったら、おにいちゃんがなってくれたらいいのに」
「俺はそういう教育をうけていないからな。俺が候補に入っているのは、本当に頭数を揃えたかっただけだ。沢山産ませたものの、女系のようだったからなぁ……男がなかなか生まれないのも、なんというか悲劇だな」
ロルフはその場でしゃがみこんで、クルトを見上げた。クルトは唇を噛み締めて、目に涙を浮かべている。
「やだ。僕、おにいちゃんと庭を綺麗にするお仕事して、それからレギーナと遊んで、それで、楽しく暮らしたいだけなんだ」
「クルト」
「新しいお母さまは、死んだお父さまの財産狙いだったから、お父さまが死んで本当は喜んでいるんでしょ……それで、カルゼを味方につけて、カルゼを次期後継者にしたらもっとお金を使えると思ってるんだ。わかってるよ。でも、それでも僕は嫌なんだ……」
じわりとクルトの瞳の端に溜まった涙が頬を流れた。だが、クルトはそれをぐいぐいとぬぐった。
「ごめん。大丈夫! それじゃ、またね、おにいちゃん!」
そう言って、クルトは護衛騎士が待っている方へと走り出した。ロルフは彼の背を見送ってから、もう一つの離れに向かったのだった。