修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
(木の根元、どう見てもここ最近植えられた土のようだった)

 本館の裏にある焼却炉に木を折って投げ入れるロルフ。

(遠い方法ではあるが、クルトを狙ってのことなのだろう。そもそも、貴族の子供なら、その辺に生っている実を食べたりはしないが、あの子は好奇心旺盛だからな……)

 それを知っている近しい者が犯人なのだろうと思う。

「それにしても……」

 本当にレギーナはたくましい、とロルフは思い出し笑いを浮かべた。生えている草を勝手に摘んで使うことがよろしくないことだと理解しながら、やってしまって小声になっている様子は面白い。

 勿論、彼女はそれだけではない。クルトとクラーラの良い遊び相手になってくれているだけではなく、きちんと駄目なことは駄目、良いことは良いと言ってくれる。その上、このカリタキの木についての知識もあるし、きっと、勉学などは学んでいなくとも、生活をする上での知恵はとても持っているに違いないのだ。

(それに、明るくて、話をしていると元気が出る)

 それは、彼女のとても良いところなのだとロルフは思う。だが、今日の会話の最後。修道院にいた時は、多くの人々と一緒にいて。でも、ここではたった1人。その話をした時、彼女の表情がわずかに曇っていたのをロルフは見逃さなかった。

(きっと、寂しいのだろう。なのに、それをこちらには気付かせまいとして……)

 ごうごうと燃えさかる焼却炉に最後の枝を突っ込んで、ロルフは蓋をした。焼却炉の煙突からは煙が出ていたが、そのまま台車を持って「離れを開けすぎたな。今日はマイナス評価にでもなっちまうだろうな……」と、こっそり呟いた。
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