修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
(どういうことなのかしら……クルト様? クラーラ様?)
冷たい牢屋に入って、固いベッドの上に腰かける。まだベッドがあるだけましな牢屋だったが、当然彼女は牢屋になぞ縁がなく、そこの待遇が良いのか悪いのかもわからなかった。
手枷は外されたが、無理矢理引っ張られたため、手首に赤い痕がついてしまった。擦り傷になっている。それをそっと撫でながらレギーナは考える。
(クルトが……さらわれた? どうして? 一体何が……)
それから、カルゼ様とは誰だろうか。まったくよくわからない。だが、しみじみ考えると、少しずつパーツがぱちりとはまって来た。彼女には学はなかったけれど、それなりに聡明だ。
(まさかとは思うけれど……み、みなさん……みなさん、ここの後継者候補……?)
いや、だが、クルトもクラーラも、ロルフのことを「おにいちゃん」と呼んでいた。そんな気安い呼び方を貴族がするだろうか。それに……
(でも。クルトとクラーラは本妻の子供だとロルフが言っていた……)
と、思い出したら、ようやく彼女は「あ!」と声をあげた。なるほど。ロルフが言っていた愛妾だとか本妻だとかの相手は、メーベルト伯爵なのだ。
「えっ、えっ、ってことは、ロルフ……ロルフも……?」
思い出すのはロルフの言葉。
――愛妾とはいっても、俺を産んでから15年後に『そうなった』だけでね。無理矢理連れ戻されて――
なるほど。きっとロルフは、このメーベルト伯爵家にいなかったのだ。どういう形なのかはわからないが、メーベルト伯爵と関係をもった女性が産んだ子供がロルフなのだろう。そして、どうしてなのかはわからないが、15年間ここではないどこかで生活をしていて。そして、何かの理由があったからここに連れ戻されたのだ。
(ああ、そういうことなのね。だから、連れ戻された後、メーベルト伯爵家では普通に庭師としてお金を出していたのでしょうけど……)
そこで、あれこれと文句をつける者がいたと。なんとなく、見えなかった輪郭が見えて来て、すっきりとしてくる。しかし、クルトのことが心配で仕方がない。
と、どかどかと足音が聞こえた。大声で「あの女はどこだ!」と叫ぶ男性の声。レギーナはそれだけですくみ上る。
「おい! お前が、クルトをさらったやつらに手引きをした女だな!?」
やってきたのは、銀髪の巻き毛の男性だ。髪を後ろで縛っており、体型はひょろっとしており、よくも悪くも印象に残らなそうな20歳ぐらいの男性だった。彼は2人の兵士をつれてずかずかと牢屋部屋に入って来て、がしゃん、とレギーナの牢の出入口を蹴った。
冷たい牢屋に入って、固いベッドの上に腰かける。まだベッドがあるだけましな牢屋だったが、当然彼女は牢屋になぞ縁がなく、そこの待遇が良いのか悪いのかもわからなかった。
手枷は外されたが、無理矢理引っ張られたため、手首に赤い痕がついてしまった。擦り傷になっている。それをそっと撫でながらレギーナは考える。
(クルトが……さらわれた? どうして? 一体何が……)
それから、カルゼ様とは誰だろうか。まったくよくわからない。だが、しみじみ考えると、少しずつパーツがぱちりとはまって来た。彼女には学はなかったけれど、それなりに聡明だ。
(まさかとは思うけれど……み、みなさん……みなさん、ここの後継者候補……?)
いや、だが、クルトもクラーラも、ロルフのことを「おにいちゃん」と呼んでいた。そんな気安い呼び方を貴族がするだろうか。それに……
(でも。クルトとクラーラは本妻の子供だとロルフが言っていた……)
と、思い出したら、ようやく彼女は「あ!」と声をあげた。なるほど。ロルフが言っていた愛妾だとか本妻だとかの相手は、メーベルト伯爵なのだ。
「えっ、えっ、ってことは、ロルフ……ロルフも……?」
思い出すのはロルフの言葉。
――愛妾とはいっても、俺を産んでから15年後に『そうなった』だけでね。無理矢理連れ戻されて――
なるほど。きっとロルフは、このメーベルト伯爵家にいなかったのだ。どういう形なのかはわからないが、メーベルト伯爵と関係をもった女性が産んだ子供がロルフなのだろう。そして、どうしてなのかはわからないが、15年間ここではないどこかで生活をしていて。そして、何かの理由があったからここに連れ戻されたのだ。
(ああ、そういうことなのね。だから、連れ戻された後、メーベルト伯爵家では普通に庭師としてお金を出していたのでしょうけど……)
そこで、あれこれと文句をつける者がいたと。なんとなく、見えなかった輪郭が見えて来て、すっきりとしてくる。しかし、クルトのことが心配で仕方がない。
と、どかどかと足音が聞こえた。大声で「あの女はどこだ!」と叫ぶ男性の声。レギーナはそれだけですくみ上る。
「おい! お前が、クルトをさらったやつらに手引きをした女だな!?」
やってきたのは、銀髪の巻き毛の男性だ。髪を後ろで縛っており、体型はひょろっとしており、よくも悪くも印象に残らなそうな20歳ぐらいの男性だった。彼は2人の兵士をつれてずかずかと牢屋部屋に入って来て、がしゃん、とレギーナの牢の出入口を蹴った。