修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
9.レギーナ解放
翌日、クルトは使っていないもう一つの離れの倉庫から発見された。当然、その離れの担当者は捕えられ、牢屋に入れられる。
彼の発見に繋がったのは、草笛のおかげだった。両手両足を縛られたクルトは最初自分の声で必死になって助けを呼んでいたが、誰もそれを聞くことはなかった。足で壁を蹴ったが、それでも誰にもその音は聞こえることはなかった。やがて、力尽きて喉も枯れた彼の目の前に、自分がポケットいっぱいに摘んでいた葉っぱが床に落ちているのを発見した。
クルトはレギーナがいない間に草笛の練習をしようと、自分で本を調べた内容を元に葉を摘んでは口の中にいれて練習をしていた。彼はポケットいっぱいにあの葉を詰め込んでいたのだ。
手足を縛られて床に放置されていたものの、ポケットからこぼれた葉を床の上で口に含んでは鳴らしてみた。最初の頃はまったく音が出なかったのに、やがて、彼はコツを掴んで、少ない力で大きな音を鳴らせるようになった。ピー、ピーという小さな音だったのが、そのうち驚くほど大きな音になった。
ちょうどその頃、その離れが怪しいのではないかとクラーラが一人で忍び込んでいた。既にその離れは調査済みだとカルゼに言われており、ロルフはどうしてもその主張を跳ねのけられなかった。だから、クラーラは内緒で人々の目を盗んでそこに行ったのだ。聞き覚えがある音に、クラーラは敏感に反応をした。
「どこ? どこなの、クルト!」
だが、クルトは力尽きたのか、途中でその音は消えてしまった。クラーラは慌てて離れを出て、ロルフに助けを求めた。
ちょうどその時、ロルフは本館で侍女長とカルゼが繋がっていることを調べていた。クラーラから草笛の話を聞いたロルフは、その離れの中を改めることを護衛騎士たちに命じる。が、そこにカルゼが現れて
「あの離れはもう調査済みだ。侍女長も共に確認をしているんだぞ。それを疑うのか? 俺のことを馬鹿にしているとしか思えないんだが」
と高圧的な喧嘩を売った。
カルゼからすれば、そこまで言えばロルフは手を出さないだろうと思ったに違いない。何故なら、彼が知るロルフは「特に何の力もない、たまに庭の手入れをするだけの、後継者争いの頭数に入れられただけの日和った男」だったからだ。
だが、本当のロルフは違った。彼ははっきりと
「そうか。では、そこからもしクルトが出てきたら、お前と侍女長のどちらも牢に入れることが出来るということだな」
と告げ、護衛騎士を連れて離れに向かう。勿論カルゼは慌てて「おい! 無駄だと言っているだろうが! そんなことより、あの牢屋の女を拷問して、クルトの行方をだな……」と追いすがったが、ロルフにその言葉は効かない。
彼の発見に繋がったのは、草笛のおかげだった。両手両足を縛られたクルトは最初自分の声で必死になって助けを呼んでいたが、誰もそれを聞くことはなかった。足で壁を蹴ったが、それでも誰にもその音は聞こえることはなかった。やがて、力尽きて喉も枯れた彼の目の前に、自分がポケットいっぱいに摘んでいた葉っぱが床に落ちているのを発見した。
クルトはレギーナがいない間に草笛の練習をしようと、自分で本を調べた内容を元に葉を摘んでは口の中にいれて練習をしていた。彼はポケットいっぱいにあの葉を詰め込んでいたのだ。
手足を縛られて床に放置されていたものの、ポケットからこぼれた葉を床の上で口に含んでは鳴らしてみた。最初の頃はまったく音が出なかったのに、やがて、彼はコツを掴んで、少ない力で大きな音を鳴らせるようになった。ピー、ピーという小さな音だったのが、そのうち驚くほど大きな音になった。
ちょうどその頃、その離れが怪しいのではないかとクラーラが一人で忍び込んでいた。既にその離れは調査済みだとカルゼに言われており、ロルフはどうしてもその主張を跳ねのけられなかった。だから、クラーラは内緒で人々の目を盗んでそこに行ったのだ。聞き覚えがある音に、クラーラは敏感に反応をした。
「どこ? どこなの、クルト!」
だが、クルトは力尽きたのか、途中でその音は消えてしまった。クラーラは慌てて離れを出て、ロルフに助けを求めた。
ちょうどその時、ロルフは本館で侍女長とカルゼが繋がっていることを調べていた。クラーラから草笛の話を聞いたロルフは、その離れの中を改めることを護衛騎士たちに命じる。が、そこにカルゼが現れて
「あの離れはもう調査済みだ。侍女長も共に確認をしているんだぞ。それを疑うのか? 俺のことを馬鹿にしているとしか思えないんだが」
と高圧的な喧嘩を売った。
カルゼからすれば、そこまで言えばロルフは手を出さないだろうと思ったに違いない。何故なら、彼が知るロルフは「特に何の力もない、たまに庭の手入れをするだけの、後継者争いの頭数に入れられただけの日和った男」だったからだ。
だが、本当のロルフは違った。彼ははっきりと
「そうか。では、そこからもしクルトが出てきたら、お前と侍女長のどちらも牢に入れることが出来るということだな」
と告げ、護衛騎士を連れて離れに向かう。勿論カルゼは慌てて「おい! 無駄だと言っているだろうが! そんなことより、あの牢屋の女を拷問して、クルトの行方をだな……」と追いすがったが、ロルフにその言葉は効かない。