修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
ある日、庭園のベンチを拭いていると、茂みでがさがさと何かの音がする。レギーナは驚いて「ええっ?」とそちらを向きつつ、少し腰が引けた。が、やがてそこから、がさがさと幼い男の子が姿を現す。
「わあ!」
「きゃっ!」
レギーナの前に出て来た少年は、年の頃8歳ぐらい。くるくると巻き毛の銀髪のあちこちに枯れ葉をつけての登場だ。ぱちぱちと緑の瞳を瞬きさせ、驚いた表情を見せる。服は小綺麗といえば小綺麗だったが、やたらあちこち土がついている。
「あ、あら、坊や、どこから来たの……?」
「あのねぇ、あっちのお庭」
「お庭から?」
見れば本館の方を指さしている。
「あっちのお庭、おにいちゃんが手入れしてるの」
なるほど、庭師か何かの弟か、とレギーナは理解をした。
「そうなの? 一人でここまで来ても大丈夫?」
「大丈夫! 今日はぁ、何もすることないから、冒険してたんだ!」
そう言って、少年はくるりと一回転した。
「おねえちゃん、なんて名前? 知らない人」
「わたしはレギーナよ。数日前から、こちらの離れの担当になったの。坊やは?」
「僕はぁ、クルト! ねえ、おねえちゃん遊んで?」
レギーナは一瞬困惑したが、とはいえ、自分も多少さぼっても問題はないだろうと思い「いいわよ」と返事をした。クルトは嬉しそうに「やった!」と何度も飛び跳ねて、大喜びで笑う。
「それじゃあねぇ~、何しようかしら……今日はなにも用意していないから、そうね」
そう言ってレギーナは庭園のベンチに座った。
「じゃあ、まずは指遊びをしましょっか!」
「指遊び?」
「そうよ。2人で出来る遊びで道具もいらない遊び。最初にコインを投げて、先攻後攻を決める……おっとと、コインがなかった! じゃあ、この木の枝を立てて……手を離したらどっちに倒れるかあてるところから始めましょ!」
修道院で子供たちを相手にしていたレギーナは、子供の遊びはたくさん知っている。勿論、修道院には多くの子供たちがいたため、大人数で遊ぶ遊びの方が得意だったが、その中でもどうにか2人や3人で出来るものを必死に思い出す、
クルトは「木の枝? 変わったことするんだね?」と言いつつ、彼女の隣に座って「僕は左側に倒れると思う!」とすぐに話にのった。そうして、2人は一時間ほど、あれこれと遊んで、すっかりくたびれた。
「クルトー! おにいちゃんが呼んでるわよー! クルト―!」
遊び疲れて少し眠そうなクルトだったが、自分を呼ぶ女の子の声が聞こえたらしく「いけない!」と叫んで飛び上がった。
「レギーナ、ありがと! ね、また来てもいい?」
「いいわよ。そのう、毎日は無理だけど……」
「あのね、僕もここに来るのは週に2,3回ぐらいなの。だから……」
「わかったわ! また待ってるわね」
「やった! じゃあね!」
クルトは大喜びで手を振って、庭園を駆けだした。遠くに、クルトと同じ銀髪の少女の姿が見える。あまりはっきりとは見えなかったが、背格好を見る限りには双子のようにレギーナには見えた。
「庭師さんの弟や妹かしらね。可愛い子だわ」
うふふ、と笑ってから、レギーナは離れに戻った。ほんの一時間に満ちないほどではあったが、クルトと遊んだ時間は、彼女にとってもいい気分転換になった。おかげで、そこからの仕事は思いのほか捗ったのだった。
「わあ!」
「きゃっ!」
レギーナの前に出て来た少年は、年の頃8歳ぐらい。くるくると巻き毛の銀髪のあちこちに枯れ葉をつけての登場だ。ぱちぱちと緑の瞳を瞬きさせ、驚いた表情を見せる。服は小綺麗といえば小綺麗だったが、やたらあちこち土がついている。
「あ、あら、坊や、どこから来たの……?」
「あのねぇ、あっちのお庭」
「お庭から?」
見れば本館の方を指さしている。
「あっちのお庭、おにいちゃんが手入れしてるの」
なるほど、庭師か何かの弟か、とレギーナは理解をした。
「そうなの? 一人でここまで来ても大丈夫?」
「大丈夫! 今日はぁ、何もすることないから、冒険してたんだ!」
そう言って、少年はくるりと一回転した。
「おねえちゃん、なんて名前? 知らない人」
「わたしはレギーナよ。数日前から、こちらの離れの担当になったの。坊やは?」
「僕はぁ、クルト! ねえ、おねえちゃん遊んで?」
レギーナは一瞬困惑したが、とはいえ、自分も多少さぼっても問題はないだろうと思い「いいわよ」と返事をした。クルトは嬉しそうに「やった!」と何度も飛び跳ねて、大喜びで笑う。
「それじゃあねぇ~、何しようかしら……今日はなにも用意していないから、そうね」
そう言ってレギーナは庭園のベンチに座った。
「じゃあ、まずは指遊びをしましょっか!」
「指遊び?」
「そうよ。2人で出来る遊びで道具もいらない遊び。最初にコインを投げて、先攻後攻を決める……おっとと、コインがなかった! じゃあ、この木の枝を立てて……手を離したらどっちに倒れるかあてるところから始めましょ!」
修道院で子供たちを相手にしていたレギーナは、子供の遊びはたくさん知っている。勿論、修道院には多くの子供たちがいたため、大人数で遊ぶ遊びの方が得意だったが、その中でもどうにか2人や3人で出来るものを必死に思い出す、
クルトは「木の枝? 変わったことするんだね?」と言いつつ、彼女の隣に座って「僕は左側に倒れると思う!」とすぐに話にのった。そうして、2人は一時間ほど、あれこれと遊んで、すっかりくたびれた。
「クルトー! おにいちゃんが呼んでるわよー! クルト―!」
遊び疲れて少し眠そうなクルトだったが、自分を呼ぶ女の子の声が聞こえたらしく「いけない!」と叫んで飛び上がった。
「レギーナ、ありがと! ね、また来てもいい?」
「いいわよ。そのう、毎日は無理だけど……」
「あのね、僕もここに来るのは週に2,3回ぐらいなの。だから……」
「わかったわ! また待ってるわね」
「やった! じゃあね!」
クルトは大喜びで手を振って、庭園を駆けだした。遠くに、クルトと同じ銀髪の少女の姿が見える。あまりはっきりとは見えなかったが、背格好を見る限りには双子のようにレギーナには見えた。
「庭師さんの弟や妹かしらね。可愛い子だわ」
うふふ、と笑ってから、レギーナは離れに戻った。ほんの一時間に満ちないほどではあったが、クルトと遊んだ時間は、彼女にとってもいい気分転換になった。おかげで、そこからの仕事は思いのほか捗ったのだった。