修道院育ちの新米侍女ですがお家騒動に巻き込まれたかもしれません
「ひ、ひとの、おんなっ……はい……? わたし? わたしが?」
しばらく、豪奢な部屋でどうしてよいかわからず立ち尽くす。すると、トントン、とノックの音。
「はい」
「レギーナ!」
クラーラがひょっこりと現れた。少しほっとしてレギーナは彼女を迎え入れる。
「ねえ、おにいちゃん凄い形相でカルゼ探していたけど、何があったの?」
「ええ~……その、この手の傷のことをまた思い出したみたいで……」
そうレギーナが言えば、クラーラは大声で笑いながらソファに座った。
「ねー、レギーナも座ったら?」
「はっ、はい」
まだ小さいのに、クラーラは何だか貫禄がある、とレギーナは思う。離れで会っていた彼女はそんな雰囲気ではなかったのに、この本館と、彼女が纏っているドレスなどのせいだろうかと、ついじろじろと見てしまう。
「あのねえ、明日一族が集まって緊急会議を開くの。今回の件について、色々とね、余罪っていうの? それが出たらしくって」
「よざい?」
「カルゼがどうしても次期当主になりたかった理由とか? このメーベルト伯爵家の財産狙いなわけなんだけど……なんか、お父様の後妻も絡んでいるようで、色々と揉めそうなのね」
「まあ……そうなんですね」
「それで、レギーナにも参考人みたいな感じで話を聞くことになるから、明日よろしくお願いします」
レギーナは少しだけ嫌そうな顔をしたが、ここまで話が大きくなれば付き合わないわけにもいかない。渋々「はい」と答えるだけだ。すると、再びノックの音が響く。クラーラは「おにいちゃんだ」と笑った。
「失礼する……なんだ、クラーラ! また邪魔しに来たのか!」
「はあ? 何それ! わたしは明日のことをレギーナにお話ししに来ただけですう~!」
そう言ってクラーラは足をバタバタさせた。レギーナはそれを見て「うふふ」と笑った。ロルフは立ったままレギーナが座っている方のソファの背もたれの角に腰をあてている。
「あっ? おにいちゃんスッキリした顔してる」
「カルゼをぶん殴って来た。俺への処分は明日待ちだ」
「もう~! ごたごたを増やさないでよね! いくら本館の権限が今わたしにあっても、庇えることと庇えないことがあるんだから!」
そう言ってクラーラはぷうと頬を膨らませ、今度は足をタンタンと踏みならす。ロルフは意地になっているようで、少し子供じみた言い草を続けた。
「庇わなくていい。これは正当だ。まあ不当だと言われても、俺はあいつを殴れたからそれでいい」
「もー! 野蛮なんだから! レギーナも言ってやってよ! 暴力反対って!」
それにはレギーナも同意をする。暴力はいけません……そう口を出すと、ロルフはいささかむっとしながら
「言っただろうが。自分の女を傷つけられて、見ない振りは出来ないぞ」
と言うものだから、レギーナは「じ、じぶん、の、おんな……」と息も絶え絶えになる。
「クラーラ、ちょっと出て行ってくれないか。俺はまだレギーナと話がある」
「しょうがないなぁ……ねえ、レギーナ後で何を話したか教えてね!」
そう言ってクラーラはレギーナに手を振って出ていった。ロルフは「教えなくていい!」と叫んだが、もうドアは閉じられた後だった。
しばらく、豪奢な部屋でどうしてよいかわからず立ち尽くす。すると、トントン、とノックの音。
「はい」
「レギーナ!」
クラーラがひょっこりと現れた。少しほっとしてレギーナは彼女を迎え入れる。
「ねえ、おにいちゃん凄い形相でカルゼ探していたけど、何があったの?」
「ええ~……その、この手の傷のことをまた思い出したみたいで……」
そうレギーナが言えば、クラーラは大声で笑いながらソファに座った。
「ねー、レギーナも座ったら?」
「はっ、はい」
まだ小さいのに、クラーラは何だか貫禄がある、とレギーナは思う。離れで会っていた彼女はそんな雰囲気ではなかったのに、この本館と、彼女が纏っているドレスなどのせいだろうかと、ついじろじろと見てしまう。
「あのねえ、明日一族が集まって緊急会議を開くの。今回の件について、色々とね、余罪っていうの? それが出たらしくって」
「よざい?」
「カルゼがどうしても次期当主になりたかった理由とか? このメーベルト伯爵家の財産狙いなわけなんだけど……なんか、お父様の後妻も絡んでいるようで、色々と揉めそうなのね」
「まあ……そうなんですね」
「それで、レギーナにも参考人みたいな感じで話を聞くことになるから、明日よろしくお願いします」
レギーナは少しだけ嫌そうな顔をしたが、ここまで話が大きくなれば付き合わないわけにもいかない。渋々「はい」と答えるだけだ。すると、再びノックの音が響く。クラーラは「おにいちゃんだ」と笑った。
「失礼する……なんだ、クラーラ! また邪魔しに来たのか!」
「はあ? 何それ! わたしは明日のことをレギーナにお話ししに来ただけですう~!」
そう言ってクラーラは足をバタバタさせた。レギーナはそれを見て「うふふ」と笑った。ロルフは立ったままレギーナが座っている方のソファの背もたれの角に腰をあてている。
「あっ? おにいちゃんスッキリした顔してる」
「カルゼをぶん殴って来た。俺への処分は明日待ちだ」
「もう~! ごたごたを増やさないでよね! いくら本館の権限が今わたしにあっても、庇えることと庇えないことがあるんだから!」
そう言ってクラーラはぷうと頬を膨らませ、今度は足をタンタンと踏みならす。ロルフは意地になっているようで、少し子供じみた言い草を続けた。
「庇わなくていい。これは正当だ。まあ不当だと言われても、俺はあいつを殴れたからそれでいい」
「もー! 野蛮なんだから! レギーナも言ってやってよ! 暴力反対って!」
それにはレギーナも同意をする。暴力はいけません……そう口を出すと、ロルフはいささかむっとしながら
「言っただろうが。自分の女を傷つけられて、見ない振りは出来ないぞ」
と言うものだから、レギーナは「じ、じぶん、の、おんな……」と息も絶え絶えになる。
「クラーラ、ちょっと出て行ってくれないか。俺はまだレギーナと話がある」
「しょうがないなぁ……ねえ、レギーナ後で何を話したか教えてね!」
そう言ってクラーラはレギーナに手を振って出ていった。ロルフは「教えなくていい!」と叫んだが、もうドアは閉じられた後だった。