仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 確かにその通りなのだが、初対面でここまでボロクソ言われるとは思わず、杏葉は顔を真っ赤にさせる。


「そんな言い方しなくても良くない!?」

「事実だろうが」

「確かに私も考えなしだったけど、どうしても治して欲しかったから……っ。
妹のあんなに辛そうな顔、見たくないの」


 スケートを滑っている時の柚葉はいつも生き生きしている。
 転んでも楽しくて仕方ないといった様子で、練習中何度も転んでは笑っていた。
 そんな柚葉の笑顔を見ていることが好きだった。


「あの子は…柚葉は絶対オリンピックで金メダル獲る!私はそう信じてるから、どうにかしてあげたいの」

「……妹さん、やってるスポーツは?」

「フィギュアスケート」

「柚葉ってもしかして香椎柚葉か?」

「知ってるの!?」

「四回転跳べる超新星だろ。知らない方がおかしいわ」

「そう、その香椎柚葉!」

「え、てことはあんた、モデルのアズハ?」

「…………」


 名指しされ、杏葉は口籠る。
 そしてダラダラと冷や汗をかいていた。


「(ヤバい、バレた……っ!!)」


 柚葉とアズハが姉妹だということは公言しており、世間では美人モデルの姉とフィギュアスケート界の超新星の妹というビッグな姉妹だと話題になっている。
 妹が柚葉だと話すということは、即ち自分がアズハだと明かすようなものだ。

 これは非常にまずい。


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