仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
何故ならば、マネージャーの橘柑奈にキツく言われているからだ。
「決して人前で素を出すな」と。
「いいか、杏葉。セレブモデルとして売り出している以上、本当はガサツでアホっぽいところがあるなんて絶対にバレるな。バレたらアズハのイメージに傷がつく」
辛辣な評価を下すのは、柑奈が小学校からの幼馴染だからである。杏葉を知り尽くす柑奈はマネージャーとして完璧にサポートし、アズハを人気モデルに押し上げた敏腕マネージャーなのだ。
とにかく口酸っぱく言われていたことなのに、こうもあっさり素顔を曝け出してしまった。
「……ええ、そうよ。私がモデルのアズハよ」
今更一オクターブ声音を高くしても、もう遅い。
「今更キャラ作ったって遅えよ」
「…………」
「なるほどな、胡散臭い奴だとは思ってたけど、セレブってのは嘘だったのか」
「な、何で嘘だって言い切れるの!?」
「見ればわかるだろ。あんたのその私服、ユニシロじゃねぇか」
「…………」
アズハは普段から全身ハイブランドという設定なのに、今はファストファッションの上下を着ている。セレブな雰囲気はどこにもない。
「靴もボロボロのスニーカーだし。それ何年履いてんの?穴空いてね?」
「〜っ、良いじゃない!!物持ちが良いんだから!!」