仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 かなりメリットが大きい取引だとは思うが、反対して欲しい。そんな気持ちでマネージャーの柑奈に電話をし、一連の話をしたのだが。


「結婚してもいいぞ」

「いいの!?」


 まさかのあっさりとOKが出てしまった。
 杏葉は思わず電話口に向かって大声をあげてしまう。


「ちょっと待って!なんで!?結婚だよ!?アズハが結婚しちゃって大丈夫なの!?」

「最近社長と話していたんだが、アズハの結婚はむしろプラスイメージになる」

「どういうこと……?」

「別にアイドルじゃないし恋愛はNGじゃない。むしろアズハのイメージ的には引く手数多の恋多き女。なのに実際はどうだ?」

「…………」


 杏葉は彼氏イナイ歴=年齢、つまり恋愛経験はない。
 これはアズハのイメージ的には絶対に隠し通したいことだった。

 たまにファンからの恋愛相談に乗ることもあり、世間的には美人でモテる女というイメージが定着している。
 実際は恋愛漫画や小説を読みまくり、恋愛している気になってそれっぽい回答をしているだけだが。


「そろそろ付け焼き刃の恋愛相談が見てられなくなってきたところだしな」

「そんな風に思ってたの?」

「契約結婚だが、アリじゃないか。しかも相手は淡雪壱護、アズハの旦那には打ってつけだ」

「柑奈知ってるの?」

「検索したら名前が出てきた。以前インタビューを受けていたらしい、天才イケメンドクターだと写真付きでな。
これはむしろもっとプラスになる。美男美女のおしどり夫婦と話題になるかもしれないぞ」


 電話越しの柑奈の声がテンション高いのが伝わってきた。
 長い付き合いだからわかる、きっと今目を爛々と輝かせているのだろう。


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