仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
「杏葉、結婚しろ」
「えっ命令形?」
「これはアズハにとって大チャンス。しかも柚葉ちゃんの怪我を治せるかもしれない。迷う余地なんかない」
「いや、あるでしょう……!?」
恋愛経験ゼロなのに交際どころか、いきなり結婚だなんて。
しかも今日が初対面の相手とだ。
だけど、それで柚葉がまた滑れるようになるのなら。
「ああもう!わかった!結婚すれば良いんでしょう!?」
杏葉は腹を括った。
様々な事柄を天秤にかけても、これ以上の話はない。
結婚でも何でもいい、やってやろうと思った。
「淡雪壱護!あなたと結婚する!」
「ほう、そうか」
壱護はニヤリと笑う。
「なら善は急げだ。あんたを俺の婚約者として発表する。柚葉さんにもすぐに会わせてくれ」
「……わかった」
「約束は守る。医者として最善を尽くす」
「私もあなたの妻として最善を尽くす」
「へえ、期待してるよ奥さん」
不適な笑みを浮かべる壱護は悔しい程にカッコよかった。
兎にも角にも二人は互いの利益のために契約結婚することになったのである。