仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
そこからはトントン拍子で話が進んで行った。
まずは柚葉の転院と問診。壱護は懇切丁寧に柚葉と向き合い、精密に検査を行なった。
結果的に手術が成功し、リハビリを頑張ればまた滑れるようになるかもしれない。
だがジャンプはこれまでのように跳べないかもしれないと真剣な表情で話した。
「もちろん跳べないということはないが、今までと同じように跳べるまでは時間がかかると思う」
柚葉は壱護の話を真剣に聞き、大きく頷いた。
「それでもまた滑れるなら、手術します。リハビリも頑張ります」
「そうか、なら一緒に頑張ろう」
「よろしくお願いします!」
元気を取り戻した柚葉を見て、杏葉は思わず涙した。
あんなに気落ちしていた柚葉がまた頑張ろうと前を向いてくれたことが、とても嬉しかった。
「よかった、柚葉……!大丈夫、きっと治るよ!」
「あず姉、ありがとう」
「ううん!」
「でも、淡雪先生と結婚するって本当なの?」
「あ、うん、そうなの」
「もしかして、わたしのため?」
柚葉が複雑そうに杏葉を見つめるので、慌てて否定した。
「違うよ!元々淡雪先生とお付き合いしてて、そろそろ結婚しようって話をしてたところだったの」
「あず姉に彼氏がいたなんて聞いてないんだけど」
「言えないよ!恥ずかしいじゃん!」
「昔からわたしには何でも話してくれたし、何度彼氏がいるのか聞いてもいないって言ってたじゃない」
「わ、私も一応芸能人だから恋人がいるって大っぴらに言えなかったのよ……」
しどろもどろになる杏葉に対し、柚葉は怪しいと言わんばかりの視線を向けている。
「だからって妹にまで隠す?」
「妹だから恥ずかしいっていうか……」