仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 杏葉は「頼むから疑われることは言わないで」と言わんばかりに視線で訴えた。
 壱護は杏葉の視線に気づいていたか不明だが、少し考えた後こう答えた。


「面白いギャップかな」

「面白いギャップ?」

「一般的にはクールビューティーで完璧なイメージだけど、実際はそうでもないところ」

「ああ、わかります」

「ちょっと柚葉!?」

「でもそこがかわいいところかな」

「!?」


 あまりにも自然に当たり前のように、まるで本当に好きだと言われているような気がして、杏葉の顔は熱くなる。


「(違う、これは演技なのに!)」


 そうとわかっていても、かわいいという言葉にドギマギしてしまう。
 男性からかわいいと言われたことなど今までなかった。

 派手な容姿は遊んでそうだと言われることが多く、モデルデビューしてからも美人や綺麗といった褒め方をされることがほとんど。
 言われ慣れない「かわいい」に動揺してしまう。


「わかりました、信じます」


 柚葉はそう頷いた後、ぺこりと頭を下げた。


「どうか姉のこと、よろしくお願いします」

「もちろん。必ず幸せにする」


 これも演技だってわかってる。
 わかってるはずなのに、真剣な表情で力強く言い切ってくれたことが不覚にも嬉しいと思ってしまった。

 はっきり言って、ときめいてしまっていた。


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