仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 それから半年が経ち、いつの間にか美男美女でお似合いのおしどり夫婦と人気になっていた。
 結婚してからアズハの好感度は上昇し、インステのフォロワー数も激増した。

 SNS上ではキラキラ輝く夢のような新婚生活が綴られている。「素敵です!」、「憧れます!」というコメント、何万ものいいね。
 それを見る度に杏葉は空虚な気持ちになる。

 だって、それら全ては嘘だから。
 実際は寝室どころか部屋そのものが別々。来客が来た時に怪しまれないため、メゾネットタイプで一階は共同スペースになっているが二階の部屋は完全に別室だ。

 生活リズムが違いすぎる壱護とは、家ではほとんど顔を合わせない。
 SNSでは自慢の手料理を愛する夫に振る舞っていることになっているが、実際は食事を一緒にしたことなど一度もなかった。

 これが仮面夫婦の現実なのだ。


「なんか結婚した感じしないな……」


 役所に婚姻届を提出し淡雪杏葉になったけれど、変わったことと言えばそれだけ。
 そもそも普段はアズハとして活動しているからほぼ変わってないことになる。


「まあ別にいいんだけどねっ。そっちのが気楽だし!」


 杏葉はそう思っていたが――。


「良いわけないだろ」


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