仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
バッサリと切り捨てたのはマネージャーの柑奈だった。
中学時代からメガネが似合うインテリ女子の彼女は、金フレームのメガネをくいっと押し上げる。
「そんな枯れ果てた新婚生活があってたまるか」
「いやだって!私たち本当の夫婦じゃないんだよ?契約結婚てゆうか、偽装結婚ってゆうか」
「でもファンが求めているのは、イケメンのハイスペ夫と甘い新婚生活を送る新妻のアズハなんだよ!」
ズビシ!と人差し指を突き付けられ、柑奈の勢いに少々怯む杏葉。
「今もハリボテ感が否めない。昨夜アップした料理、手料理と書いてるが適当に買ってきたものをそれっぽく盛り付けただけだろ?」
「なんでわかったの!?」
「何年一緒にいると思ってるんだ。杏葉のやりそうなことなんてお見通しだよ」
流石は幼馴染にしてマネージャーといったところだろう。
「だって……壱護と家で全然会わないし。当直とか緊急のオペとか大変そうなんだよね」
「敏腕ドクターは大忙しだな」
「柚葉もいないから一人分だけご飯作るのだるくて」
柚葉と二人暮らしだった頃は、柚葉のために栄養バランスの取れた食事をと料理は頑張っていた。
やろうと思えばそれなりの料理は作れるが、食べてくれる人がいないとなると途端に億劫になってしまう。
「とは言えこのままでいいわけあるか?いつか絶対バレるぞ!そもそもこれまでも私がどれだけフォローしていることか」
「いやもう柑奈がいなきゃアズハは成り立たないよ、マジで」