仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
大衆は誤魔化せても実の妹には通用しないか、と杏葉は眉を顰める。
「柚ちゃんに心配かけたくないなら、もう少し夫婦らしく振る舞った方がいいと思うな」
「……わかった。壱護に話してみる」
「(柚ちゃんのためなら何でもするんだよな)」
* * *
その日、いつもより早めに帰宅した壱護に早速提案してみた。どうせ難色を示されるのだろうと思っていた。
しかし、
「いいぞ」
あまりにもあっさりそう言われてしまい、もう少し食い下がる理由を考えていた杏葉は思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
「へ?」
「行くか、新婚旅行」
「ええっ!?行くの!?」
こうもあっさりOKされるとは思っておらず、驚きが隠せない。
「自分から言い出したのに何驚いてんだよ」
「だって絶対反対されると思ったから!」
「実は親から言われたんだよ。結婚して半年経つが、子どもはまだかと」
「子どもっ!?」
子どもなんて仮面夫婦にできるわけがない。同じベッドで寝たことすらないのだから。
「で、ハワイの旅行券を手配されたんだ」
「展開早くない!?」
「俺の有給が余りまくってるのも問題視されてな。無理矢理スケジュールをねじ込まれた」
「えええ……」
「まあそういうわけだから、行くぞハワイ」
こうして仮面夫婦は突如新婚旅行でハワイに旅立つことになったのだった。