仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
3.妻は悩殺したい
雲一つない澄み渡る青空、燦々と照りつける太陽。
高く聳える椰子の木は、ここがハワイなのだと実感させてくれる。
表向きはセレブな新婚夫婦、実際は利害関係による仮面夫婦の杏葉と壱護は、ハワイへ新婚旅行に訪れていた。
「いい天気だな」
「……」
最高の旅行日和だというのに、空港に着いてから杏葉はずっと暗かった。
「なんだ、飛行機に酔ったのか?」
「違う……柚葉が!全然寂しがってくれないんだもんっ!!」
新婚旅行に行くと柚葉に伝えたら、寂しがるどころかむしろ瞳を輝かせていた。
心配しなくても大丈夫だから是非行って来て、と背中を押されてしまい、若干複雑だった。
「何かあったらすぐ連絡してって言ったのに、柑奈がいるから大丈夫だって!!寂しくない!?」
「前から思っていたけど、あんたかなりのシスコンだよな」
「悪い!?」
「別にいいけど、海外だからって気を緩めない方がいいんじゃないか」
「え?」
その時、背後からこんな会話が聞こえてきた。
「ねぇ!あそこにいるのモデルのアズハじゃない!?」
「ほんとだ!隣にいるの旦那さん?めっちゃイケメン!」
「美しすぎる夫婦…!」
その言葉を聞いた途端、カチッとスイッチが入った杏葉はするりと壱護の腕に絡み付いた。
「ダーリン、早く行きましょう?」
麗しい女神の微笑みに、「キャーーッ!」という黄色い声があがる。