仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
ニコニコと笑みを浮かべながら、内心は「あっっっっぶな!!」と思っていた。
海外だからと気を抜いていると危ない。
そもそもハワイは観光客が多く、日本人も多くいる。アズハのフォロワーの中には海外ファンも多くいるし、決して気を抜くなと柑奈から釘を刺されていた。
「(あれだけ言われてたのに私ったら!!)」
「変わり身だけは早いな」
「ふふふ、長年の技ってもんよ」
腕を組んだまま、小声で話しながらファンから距離を取る。
だが一度バレてしまうと周囲に気づかれやすくなってしまうらしく。
「あーーっ!淡雪夫婦だ!」
「ご夫婦で旅行ですか!?」
行く先々で声をかけられたり、サインを頼まれたり。夫婦の写真を撮らせて欲しいと言われることもあった。
二人は終始能面のように笑顔を貼り付けたまま、応対した。
「本当にお二人とも美男美女でお似合いですね!」
「うふふ、ありがとう♡」
「旦那さんも一般人だなんて思えないです!」
「僕なんてそんな。妻の輝きの足元にも及ばないですよ」
「嫌だわ、あなたったら♡」
「キャー♡ラブラブなんですね!」
ホテルにチェックインした頃には、二人とも表情筋が痛くなっていた。
「なんで着いて早々クサイ小芝居をやらなきゃならないんだ」
「なんか私一人でいる時より声かけられたんですけど!?複雑!!」
「知るか!」