仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


「(何あれっ!!ムカつく!!)」


 壱護がこれまでモテてきたであろうことはわかる。
 結婚しろと言われても相手を作ろうとしていなかったことから、今は恋愛に興味がないのかもしれない。

 杏葉は柚葉のため恋にうつつを抜かしている場合ではないと言い聞かせていたが、本音は恋愛することが怖かった。

 同性には昔から嫌われていた杏葉は、幼馴染の柑奈以外友達がいなかったが、高校時代唯一他に友達ができたことがあった。
 とても優しくて大人しい子だけど、不思議とウマがあって一緒にいるのがとにかく楽しかった。
 私たち親友だね、なんて言い合ったりもしていた。

 ある日、彼女から好きな人ができたと告白された。
 同じクラスのイケメンと言われる男子だった。

 たまたま席替えで杏葉とその男子が隣の席になり、親友のためと思って積極的に話しかけ、仲良くなろうとした。
 恥ずかしがりやの親友のため、少しでも協力がしたいと思ったのだ。

 だが、ある日その彼から告白された。


「香椎さん、俺のこと好きなんだよな?あんなに毎日ニコニコしながら話しかけてくれて。思わせぶりなことしてたよな?」


 そして、その様子を彼女に見られてしまった。
 杏葉は否定しようとしたが、彼女は杏葉を拒絶した。


「杏葉ちゃんは他人(ひと)の彼氏を奪うって。そんなことする子じゃないと思ってた。でも、本当は陰で私のこと笑ってたんだね」


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