仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
そういえば自分にナンパしてくる男はみんな変なやつばかりだった、と思い返して鳥肌が立つ。
十代の頃は何度も変質者に遭遇し、軽く男性恐怖症になった。その頃の記憶がぶり返し、震えが止まらなくなる。
「(やだ、怖い……っ!!)」
その時、グイッと肩を引き寄せられた。
気づいた時にはたくましい腕の中に杏葉を包み、ギロリとナンパ男を睨み付ける壱護がいた。
「彼女は俺の妻だが、何か?」
壱護の言葉に思わずとくん、と胸が高鳴る。
「Oh〜ハズバンド……」
「サヨナラ〜」
夫が登場して流石に居心地が悪いと思ったのか、ナンパ男はそそくさと立ち去って行った。
「大丈夫か?」
「あ、ありがと……」
「ったく、このアホ!」
「!」
「変な男に絡まれるな。今は俺の妻なんだから」
「えっ……」
その言葉に更に大きく胸が高鳴る。
もしかして嫉妬しているのだろうかとドキドキしてしまう。
「あんた一応人気モデルなんだろ?変な噂されたくなかったら大人しくしてろ。俺もスキャンダルに巻き込まれるのはごめんなんだよ」
一瞬にしてときめきは消え失せた。
「(あー、そういうことね……)」
何を一瞬でも期待してしまったのだろうか。
自分たちは利害関係で成り立つ仮面夫婦だというのに。
そして彼の言うことが最もだということが悔しい。
「ごめんね!!美人すぎてすぐナンパされて!」
「かわいくねーな」
「事実だから」