仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 我ながらかわいくないという自覚はあるが、無駄に高くなってしまったプライドが邪魔をする。


「一応お礼言っとくわ。助けてくれてありがとう」

「ほんとかわいくないやつ。ナンパ慣れしてないくせに」

「なっ!」

「めんどくさいから俺から離れるなよ」


 そう言って壱護は再びグイッと杏葉の肩を寄せる。
 密着することで気づいてしまった。

 壱護の上半身が剥き出しの状態であること。
 胸板は厚く腕もたくましく、六つに割れた腹筋は美しい。
 ほぼ素肌同士で密着している状態に、思わずボボボッ!と顔から火が出た。


「(何これ、どうしたらいいの……!?)」


 彼氏イナイ歴=年齢の杏葉には刺激が強すぎる。
 何より壱護がこんなにも良いカラダをしていたなんて、反則級だ。


「……っ」

「何黙り込んでんだよ」

「べ、別にっ」

「もしかして、俺の裸見てムラムラしてんの?」

「はあっ!?そんなわけないじゃない!!」

「顔真っ赤だぞ」

「暑いせいよ!!」


 悩殺させると意気込んでいたのに、これでは杏葉の方が悩殺されてしまっている。
 いや、違う。男性の裸体に見慣れていないだけだ、と杏葉は誰にしているのかわからない言い訳をしていた。


「(このまま負けてられるもんですか!)」


 別に勝負ではないのだが、杏葉は一人で息巻いていた。
 杏葉は大きなドーナツ模様の浮き輪に入り、海の中に入る。


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