仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
程よく冷たく、透き通る海はとても気持ちが良かった。
壱護を悩殺することなんか忘れて、杏葉ははしゃいでしまう。
「気持ちいい〜!壱護も早く来なよ!」
「ああ」
壱護もジャバジャバと海の中に入って行った。
「あー!魚がいる〜!!」
顔を水につけなくてもわかった。それ程までに海水が透き通っているということだ。
小さな魚がスイスイと泳いでいるのが可愛らしい。
「見て壱護!魚!」
「そうだな」
「かわい〜!美味しそうだね!」
「プッ」
「なんで笑うの?」
「いやだって……っ、美味しそうってセレブは言わねえだろ」
「!!」
ついつい素になってはしゃいでしまった。
もしこの場に柑奈がいたら厳しい目を向けていたことだろう。
「今のナシ!」
「無理があるだろ」
「忘れて!!」
「やだね」
壱護は意地悪く楽しそうな笑みを浮かべる。
その表情が少し幼く見えて、不覚にもドキッとしてしまった。
自信家で嫌味なことを言うくせに、唐突にドキドキさせられてしまうから困る。
「(だからなんで私ばっかりドキドキしてんのよ!)」
そもそも本気ではしゃいでしまったことを反省し、杏葉は改めてやり直そうとしていると。
「おい杏葉、どこ行くんだ?」
「え?」