仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 誰もが憧れる淡雪夫妻はどんな新婚生活を送っているのか。
 ファンならば誰しもが注目し、煌びやかで甘い蜜月を想像するだろう。

 淡雪夫妻の本当の顔は誰も知らない。


「――なんでこの俺がモデルなんぞやらなければならないんだ」


 壱護は不満しかないという表情で妻を見下ろす。


「だってどうしても夫婦で!って言うんだから仕方ないでしょ!」

「ブライダルモデルなんぞ偽夫婦だろうが!」

「新婚の私が他の男性モデルとブライダルモデルやったらイメージに傷がつくの!!」

「知るか!!……ったく、まあ偽夫婦ってのは俺たちもそうだけどな」

「……っ」


 実はこの夫婦、戸籍上だけの偽夫婦なのである。
 人前で見せる仲睦まじい夫婦の姿は全て演技であり、実際の関係性はこの通りだ。


「つーかあんた、途中俺の足踏んだだろ」

「ウッ。だってドレスの裾長すぎなんだもん!」

「普段からドレス着慣れてますみたいな顔してるくせに」

「うるさいな!てかあの時ごめんって謝ったじゃない!」

「聞こえてねーよ。ボソッと言ったくらいじゃ」

「聞こえてんじゃない!!」


 ――と、まあこのような感じで年甲斐もなく言い合いをしている。


「にしてもキャラ作りすぎじゃね?めっちゃデキる女風に見せてるけど、よくバレねぇな」

「うるさいっ!!壱護だって外面良すぎのくせに!」


 そもそもこの二人、何故結婚したのかというと半年前に遡る。


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