仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
「!! 美味しい!」
鯖独特の臭みがなくて食べやすい。ピリッと香辛料が効いているのも美味しい。
こんなに美味しいのに低カロリーなのだから驚きだ。
「えっ天才なの?」
「だろ?」
「否定しないところはムカつくけど、でも美味しい」
無論豆乳コーンスープもピーマンの豆腐詰めも、文句なしで美味しかった。
「壱護って料理できたんだ」
「最近は忙しくてできないけど、意外と好きなんだよ」
「そうなんだ。しかもヘルシーメニューにやけに詳しくない?」
「栄養学をちょっとかじってるだけ」
「そうなんだ。外科なのに」
「関係ねぇよ。そもそもしっかり栄養を摂って丈夫な体作りができていれば、病気も怪我もしないんだからな」
「そっか」
確かにそうだな、と杏葉は思った。
杏葉も柚葉の健康のため、食事には気を遣っている。その分自分のことは疎かになりがちだった。
「あんた、どーせ今まで柚葉さんのことばっかで自分は二の次なんだろ」
図星である。
「妹のために全力でサポートできるのは感心するけど、自分のことも労われ」
「……はい」
「今は俺の妻なんだから」
「っ!?」
どういうこと? と聞き返したかったが、上手く言葉を発せなかった。
それどころかコーンスープが喉の変なところに入って咽せてしまう。
「げほっ、げほっ」
「何してんだよ」
壱護はすぐにハンカチを差し出してくれた。