仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
杏葉と柚葉は腹違いの姉妹である。
杏葉の両親は杏葉が幼い頃に離婚し、杏葉は父親に引き取られた。その後父は別の女性と再婚し、柚葉が生まれた。
とても仲の良い家族だったが、四年前に両親が亡くなった。夫婦だけで旅行に行き、飛行機事故に遭ってそのまま二人とも帰らなかった。
姉妹は親戚に引き取られることになったが、杏葉は拒んだ。
もし親戚に引き取られてしまったら、柚葉は今のようにフィギュアスケートを続けられないと思ったからだ。
三歳でスケートを始めた柚葉は才能を開花させ、その当時からジュニアの大会で活躍していた。
柚葉がオリンピックで金メダルを獲ることは家族みんなの夢だった。
スケートは辞めると言った妹を、杏葉は全力で止めた。
「柚葉にはスケートを続けて欲しいってお父さんもお母さんも思ってるはずだよ。お金のことは気にしないで。私が何とかするから!」
フィギュアスケートはお金がかかる。トップ選手を目指すのであれば個人レッスン代、リンク代、交通費や遠征費、衣装代など。
普通の会社員だった両親が家計を切り詰めて捻出していたこと、杏葉は重々承知している。
それでも柚葉の夢を叶えたいと思った。夢を叶えるためのサポートは何でもすると決めた。
杏葉は高校生の頃から読者モデルの仕事を始めていたが、本格的にモデルとして頑張るようになる。
元々派手めな顔だったため、そのイメージを活かすべく美人セレブモデルとして売り出したところ、これが大当たりだった。