仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜


 今日の撮影を終え、病院に向かう。
 柚葉が食べたいと言ったフルーツタルトを買って向かう途中、背後から声をかけられた。


「アズハさん」

「あっ梨本さん」


 梨本が右手を挙げて声をかけてきた。


「こんにちは、柚葉ちゃんのところにお邪魔しても大丈夫ですか?」

「はい、もちろんです!ありがとうございます」

「チーズケーキ、好きですかね?」


 そう言って梨本が見せた白い箱は、TVでも紹介されたことのある人気ケーキ屋の一番人気と言われるチーズケーキだった。


「これ有名なやつ……!柚葉喜ぶと思います」

「よかった。アズハさんも食べてくださいね」

「ありがとうございます」


 二人はそのまま並んで歩きながら、病院へと向かう。
 しばし沈黙が続き、杏葉は何となく気まずい。


「あの、梨本さんは壱護の幼馴染なんですよね?」


 気まずいので話を振ってみる。


「昔の壱護ってどんな感じだったんですか?」

「そうですね、練習はとても真面目に取り組んでいましたよ。ジャンプも上手くて難しいジャンプもモノにするのが早くて、すごいやつでした」

「そうなんですか」


 杏葉は華麗にジャンプを跳ぶ壱護を想像して、ちょっと見てみたいなぁと笑ってしまう。


「あいつは今でもそうだけど、一つのことに集中するとそればっかりになるんです。周りなんて見えないくらい――だから僕のことなんか気にしてなかったと思います」

「え?そうなんですか?」

「ええ、僕ばっかりライバル視してました」



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