仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
「それで、あず姉は本当に幸せなの?」
妹の問いになんて答えたら良いかわからず、フォークを握りしめていた。
「あず姉はなんでも私ばかり優先して、いつも自分のことは二の次じゃない。私はあず姉に支えてもらってばかりで、私の存在が重荷になってるんじゃないかって悩むこともあった」
「そんなことない!重荷になるわけないよ!」
思わず杏葉は大きな声を出してしまい、ここが病室だということを思い出して慌てて口を塞ぐ。
柚葉はそんな姉にクスリと笑った。
「ありがとう。でもね、あず姉にはずっと自分だけの幸せを考えて欲しいなって思ってた」
「私だけの幸せ?」
「私はあず姉に誰よりも幸せになって欲しい。あず姉は今幸せ?」
「……っ、私はずっと、柚葉がいてくれたらそれで幸せだったの」
両親を亡くし、たった一人の家族で大切な妹。
柚葉が大好きなフィギュアスケートに打ち込んで、夢を追いかける姿を隣で応援できれば、それだけで幸せだった。
「でも今はね、壱護が一緒にいてくれたらいいなって思う。壱護と他愛のない会話して一緒にご飯食べて、笑い合ってる時間がすごく幸せだなって思うの」
キラキラしたセレブな生活なんていらない。
ただ一緒にいてくれるだけで良い。何年先の未来も二人で歩んでいけたら、そう思えるだけで幸せだなと思う。
壱護も同じ気持ちになってくれたら――もっと幸せだ。
「契約結婚だったのに、本当に好きになっちゃった……」