仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
振り返ってみて、その人物の圧倒的オーラに思わず息を呑んだ。白衣を着た長身の男性は、何とも言えない気高いオーラを放っている。
思わず見惚れるくらいに見目麗しいその男性に、杏葉は一瞬にして釘付けになった。
それと同時に二郎が慌てふためく。
「い、壱護……!」
「あんたは先日医師免許を剥奪されただろ?何してんだ、ヤブ医者さんがよ」
低い声で二郎を睨み付ける。美形だからか、凄むと迫力がある。
そんなことよりも、耳を疑う事実を聞かされた杏葉は思わず聞き返す。
「医師免許を剥奪された?」
「そうだ。先日あり得ない医療ミスをして患者の命を危険に晒した。俺がすぐに気づけたから最悪は避けられたが、あんたは一歩間違えば殺人犯になってたかもしれねぇんだぞ」
「……」
二郎は青い顔をして顔を背けている。
「その上に次は詐欺か?どうしようもねぇクズだなお前」
「詐欺ってどういうことですか?」
「その治療方法は一億もかからねえよ。どこまでうちの病院を貶めれば気が済むんだ」
「ち、違う、これは」
「院長にも報告する。野放しにしてたら罪が増えるばかりだ。ムショで反省してな」
「壱護お前っ、叔父を警察に突き出すのか!?」
「それくらいしないとテメェは何も変わらねえだろ!」
壱護の激しい怒りに縮み上がり、二郎は抜け殻のようにへたり込んでしまった。
その後壱護が通報した警察が二郎の身柄を連行した。