冷たい城の番人
自分の名前、あんまり好きじゃないのに……。
「彗星!? すげ〜っ珍しいね!」
「可愛いですよねっ」
「うん、彗星ちゃんまじタイプ!」
そう言いながら突然肩を抱かれて、びくっとなる。
ここでやめてくださいなんて言ったら相手の機嫌を損ねるかもしれない。
我慢、しなくちゃ……。
自分に言い聞かせながら歩いていたけれど、一向に離れてくれる気配がない。
それどころか、肩を抱きながらさりげなく胸元を触ってこようとする。
やだ……。やっぱり無理……っ。
「リサちゃんっ、ちょっとごめん」
限界がきて、少し前を歩くリサちゃんに声を掛けた。
「今、家族から連絡が来て……早く帰ってこいって」
「えーっ、今来たばっかりなのにっ?」
「ほんとにごめん! お母さん怒ると怖いから、今日は帰るね……っ」
すごく急いでいるフリをして、返事を待たずに踵を返した。