冷たい城の番人
「そうなんだ。わたしもイケメン拝みたいなあ」
「でしょ!? じゃあミクにラインしとくねっ。……“スイも行けるんだって〜!”っと」
すばやくスマホに文字を打ち込むリサちゃんの傍らで、わたしは窓の外に視線を移しながら今の会話を反芻する。
来世様……かあ。
市街地の向こう側に、L区の時計塔が見えた。
この景色はすっかり日常に溶け込んでいるけれど、未だなおあのエリアに足を踏み入れたことはない。
「てゆか、スイが乗り気なの珍しいねー? 男は当分いいやって感じだったのに」
メッセージを送信し終えたらしいリサちゃんが上機嫌に尋ねてくる。
「うーん。男の子とは関わりたくはないけど、美しいお顔を拝むだけなら目の保養になるしいいかな〜って」
「あははっ! スイらしい」
正直、来世様にそこまでの興味はないけれど、誘いをわざわざ断るほど無関心なわけでもない。