冷たい城の番人
……って言ったところで、この感覚は伝わらないだろうな。
そう思って口をつぐむ。
そもそも、自分でもうまく言語化できない。
なんていうか、例えば、この見慣れた景色の中にあるL区の時計塔も、実在している感じがしないんだ。
ハリボテなんじゃないか。
もしくは、現実から隔絶された異世界的な空間なんじゃないか。
L区に行けばなんでも手に入るという噂もある。
それこそ、夢物語みたいな……。
……なんて、ね。
ありえないのはわかってるんだけど。
「L区がなに? 言いかけてやめるのやめてよスイ」
「あ~えっと、L区に行くの楽しみだけど、身の安全はちゃんと大丈夫なのかなって」
つい頭の中とは違うセリフがこぼれ落ちる。
身の安全なんかどうでもいい。
──たとえ命を落としたとしても……べつに。