嘘からはじまる恋のデッサン
──シロクマ先生のサイトに登録してから瞬く間に一カ月が過ぎ去った。

この一カ月、私はどうしてもひとりで耐えられない夜はシロクマ先生こと俊哉にメールで話を聞いてもらうようになっていた。絵しか取り柄がない私はお世辞にも文章力があるとは言えず、ただ単語を羅列するだけのときも多かったが俊哉は何も言わなかったし、いつも私の心にそっと寄り添うような言葉をかけてくれた。

『先生、俺友達いないから』

確か二学期に入ってすぐの時だったろうか。夏休みが終われば今年もあっという間に終わるんだろうね、という話の流れから、俊哉とクリスマスの話をしたことがあった。

今、私が通っている高校は私立の女子高でミッション系の学校なのだが内気で陰キャな私に友達はひとりもいない。私が学校で讃美歌を歌わされたと話したことから、俊哉にミッション系の大学はクリスマスが華やかだよね?と話を振られ、大学のクリスマスツリーの点灯式は友達を観に行くの?と聞かれたのだ。

この時──私は内心しまったと思った。俊哉と真夜中にメールで会話する中で、段々と気を許し始めていた私は、大学の二回生で性別が男である『マサル』ではなく、女子高に通う性別が女である『私』自身が気を抜けばうっかり顔を出しそうになる。

──『友達の定義って難しいよね。どこまでが友達と言っていいのか、何をもって友達だと言ったらいいのか。友達と思ってたけど実は全然心の距離が違う赤の他人だったりとか僕もあるよ』

『俺、陰キャだから。仮に友達と呼べる人がいいてもうまく心の中吐き出せるとは思えないし……正直、俺みたいな重い話ばかりされたら相手も嫌な気持ちになると思うし』

──『相手のことを考えてあげられるマサルはやっぱり優しいね。実は僕も人づきあいが苦手でね。学生時代はいつも一人で過ごすことが多かったかな』

(あ、やっぱり学生じゃないんだ。そうだよね)

──『でももしも、マサルが誰かから話しかけられたとして、余程嫌だと感じなければ思い切ってその相手と話してみるのもいいかもね。相手のことを考えるあまり、積極的に人づきあいできないのって僕含めて意外とよくあることだから。マサルにもいい出会いがあることを祈ってるよ』

(いい出会いか……私にもいつかリアルの世界で友達できるかな)

< 6 / 28 >

この作品をシェア

pagetop