スパダリ航海士は契約妻を一途に溺愛する。
「今日はありがとうございました、とてもおいしかった」
男性は会計をしながら「来て良かったよ」と言って、一つ紙を取り出す。
名刺……?
「名乗っていなかったから、一応名刺を」
「あ、ありがとうございます。えっ……【ひらさか丸】って、あの今、港に停泊していらっしゃるあの?」
「あ、はい。そうです。チーフオフィサーと呼ばれていて、一等航海士をしています……あ、分かりやすく言うと船長の次の位です」
「えっ……そ、そんなにすごい方だったんですね」
だからあんなに英語がペラペラだったのね……
世界が違う。
「そう凄くは無いから、畏まらないでほしい。このお店は明日もやってる?」
「はい、朝の十時から開店してますよ」
「そうか、良かった。じゃあ、また来るよ」
男性は帰っていき、私は名刺を見てまた会えたらいいな、と少しだけ思ってしまった。
「……そういえば、私、明日は休みだ」
呟いたが、私目的では無いと思うし休んでも何も変わらないかと一人でツッコミを入れて仕事に戻った。