スパダリ航海士は契約妻を一途に溺愛する。
それからすぐに夕食の時間になったのか、お兄ちゃんが呼びにやってきた。
「もも、ご飯だってー」
「お兄ちゃん、久しぶりだね。元気だった?」
お兄ちゃんは私の三つ上で、大学は東京だったけど卒業してからは地元に戻ってきて大手の銀行で働いている。そして去年、同じ職場で後輩のハナさんと結婚した……全く知らなかったけど。
「うん、元気元気。この前は結婚祝い送ってくれてありがとうな」
「ううん。お兄ちゃんにお付き合いしていた人がいたなんて知らなかったからびっくりしちゃったよ」
「あはは、ごめん。母さんたちにも内緒にしてたんだよね、言うと結婚はいつするのとかうるさくなると思ってさ」
「それは確かに。いえてるかもね」
それは、確かにわかる。きっと私が誤魔化して『お付き合いしている人がいる』と言えばどんな人なのかとか結婚はいつなのかとか言われていたと思うし……
そんな話をしてからリビングに行くと、そこにはお母さんとハナさんが配膳をしているのが見えた。今日がハナさんとは初対面で挨拶をする。とても可愛らしい方で……お母さんが好きなタイプだなって、思いながら座る。