スパダリ航海士は契約妻を一途に溺愛する。
乗船口に彼にエスコートされながら行くと「篠原」と後ろから声をかけられる。振り向けば、咲翔さんと同じ制服を着た方が一人いた。
「やっぱり、篠原だ。良かった、合ってて。もしかして、その人が今噂の……」
「葉口か……噂がなんなのか知らないが。紹介するよ、俺の婚約者の坂本百々芭さんだ。お前は一人なのか? 奥さんはどうした」
「あー、今回はね。妻は妊婦なのでね。やっぱり、そうなんだ。……初めまして。俺は、二等航海士の葉口(はぐち)といいます。篠原とは同期なんだ。よろしくね」
葉口さんは挨拶だけのつもりだったのか、それだけ告げて中に入って行った。
私たちも乗船をして入ると、煌びやかな空間が目に映った。
「綺麗ですね……素敵」
これが豪華客船なのか……テレビで紹介されていた通りの船内でパーティーということもありキラキラが倍増している。それから先に進み、エレベーターホールに向かった。
「エレベーターがあるんですね」
「あぁ、七階まであるからね。階段は大変だし大体はあるよ。パーティーのホールは、五階にあるんだ」
「そうなんですね。エレベーターホールも高級ホテルみたい」