スパダリ航海士は契約妻を一途に溺愛する。
6.限定婚約者からの契約結婚
パーティーから数日。
あの日のことは鮮明に覚えているのに豪華すぎて夢だったんじゃないかと今は思っている。
今日は、お店の定休日なので菜摘の家でランチをしている。
「……で、あれから音沙汰ないんだ?」
「うん。パーティー終わってからは何も」
あの日の帰り道、咲翔さんは『また連絡する』と言っていたけどあれから何もメッセージがなかった。もちろん電話もなかったから、本当に“限定”だけの婚約者だったのだと思い知らされている。
「そうなのか……まぁ、でも、いい経験にはなったんじゃない? 豪華客船のパーティーなんて、私たち一般庶民には夢のまた夢だよ」
「確かに。いい経験だったって思うしかないのかも」
「それに、彼って百々芭のタイプだったでしょ?」
「え……!?」
そう言われたら、そうだ。
性格も優しくて頼りになって素敵だったけど、ガタイが良くてほんのり日焼けがある……長身で逞しい体つきで、理想的な容姿だった。それに声も、低くてあんな声で服のことだと絶対思うけど『可愛い』とか言われて叫ばなかった私を褒めたい。