スパダリ航海士は契約妻を一途に溺愛する。
「……久しぶり、百々芭ちゃん」
「あ、はい。お久しぶりです……お店に来てくださってありがとうございます」
「百々芭ちゃんに会いたくて来たんだ。……こっちはおまけだけど」
咲翔さんはそう言うと、なぜか顔を真っ赤にして照れているようだった。
「篠原とか他の船員がここのお茶がすげー美味いって言ってたから来たかったんだけど、篠原が今日行くって言うから来ちゃった。だけど、まさか婚約者さんのお店だったなんてびっくりしたよ」
婚約者……か。
もうきっと彼の中では終わってると思うけど、そうだよね。あそこにいた人はきっと私の顔も名前も覚えているんだろう。
「……百々芭ちゃん。あとで時間あるかな? 話したいことがあるんだ」
「話したいこと、ですか?」
「うん。少しでいいんだ……作ってはもらえないかな?」
「私、今日は十六時までの勤務なのでそれからなら大丈夫です」
私が時計を見ながら伝えると「わかった。待ってる」と言い微笑む。すると葉口さんが「デートのお誘いだったんだな、うん。納得」と言って咲翔さんを茶化していたので、私は心の中で違うと思います……と思わず突っ込んだ。